Nov 30, 2014

僕とスコットランドのうさぎたち

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僕が人生初の海外旅行で渡英したのは、20代後半の頃。当時凝っていたスコッチウイスキー飲みたさに、英語もろくに話せないのに、ひとりで蒸留所巡りのドライブ旅行に出かけたのです。
ロンドンからエディンバラまで鉄道、そこからはレンタカー。穏やかで庭園的なイングランドと違い、スコットランド、とくにハイランドの景観は荒々しくドラマティックで、旅すればするほど魅了されました。

ブリテン島最北端のダネットヘッドという岬に立ち寄った時のこと。
崖っぷちの斜面の草地に、数匹のうさぎが走りまわっていました。
すぐ真下は北海の荒波。冷たい風が吹いています。厳しい環境の中で、あんな小さな体で一所懸命に暮らしているうさぎたち…「なんてけなげなんだろう! 見かけは小さくて愛らしいのに、それとはうらはらに、実はなんてたくましく生きているんだろう!」と思いました。

ピーターラビットのモデルにもなったこの種類のうさぎ(アナウサギ)は、ヨーロッパ中どこにでもいます。野生動物とはいっても英国の郊外では全然珍しくなく、公園でも見かける、いわば都会の野良猫と同じような存在です。

でも、なぜか、この時ダネットヘッドで出会ったうさぎの姿は、忘れがたいものでした。

僕は翌年からうさぎを撮影するために、毎年のようにスコットランドを訪れるようになりました。
それまで動物にも、いわゆる動物写真にもまったく興味がなかったので、周囲もちょっと驚いていましたが、僕にとってうさぎの撮影は「動物写真」ではなく、「彼ら」という存在を撮っている感覚なのです。

 いつも滞在する小さな田舎村では、気さくな地元の人たちが「Japanese rabbit man!今年も来たのか」と迎えてくれます。1日中うさぎの撮影をして、日が暮れるとパブで地エールを一杯。ときには友人宅を訪れたり、音楽セッションを聞きに行ったりもします。
現地では「うさぎなんかイングランドにもいっぱいいるのに、わざわざ遠い日本からこんな所まで来るなんて、お前は物好きだなぁ!」とよく言われます。

もちろん他の土地(例えば湖水地方とか)にもうさぎの繁殖地は無数にあります。でも僕は、スコットランドという国と、撮影地のクロヴァ渓谷に今ではとても愛着があるので、ここに住むうさぎだけを撮っているのです。

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野生のアナウサギは警戒心が強いので、容易には近づけません(天敵が多いのです)。
野原や牧場にある”うさぎ村”の近くまで行くと、あとはじりじりとほふく前進。地面に這いつくばってファインダーを覗くと、そこにはうさぎたちの世界が広がっています。

子どもたちがちょろちょろと元気に走り回っているのは、まるで幼稚園の運動場のよう。穴の近くの陽だまりでうつらうつらしているお年寄りうさぎ。しつこく乳をねだられて面倒くさそうな?お母さんうさぎ。のんきな風景…
ところが、にわか雨や鳥の鳴き声、見張り役の合図などでいっせいに穴の中に隠れてしまったり、あまりに暑い日はずっと待っていても夕暮れまで穴から出て来てくれなかったり。彼らの日常にもいろんな変化があります。

1日の中でも天気がころころと変わるスコットランド。僕もうさぎたちと一緒ににわか雨に濡れたり、虹を見たり、土や草の匂いを感じたりしながら、自分自身も日本からやって来た一匹のうさぎになった気分で撮影しています。

アナウサギにはピーターラビットに代表される、”愛嬌のあるいたずら者”というイメージがあります。姿もしぐさも、本当に愛らしくて、見飽きることがありません。
けれどその一方で、野生のうさぎたちは毎日SURVIVEしています。敵から身を守り、草を食べ、穴を掘り、子を育てる。自然の中で、小さな体で懸命に生きる姿は、ただ可愛いだけではありません。

ちっちゃい。かわいい。でもほんとうは、たくましい。
この思いは初めて出会った時から変わっていません。僕は普段は雑誌や広告の仕事をしていますが、うさぎの撮影は、ライフワークとして今後も続けていきたいと思っています。

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2冊目の写真集『うさぎの国へ スコットランドのアナウサギ』が出版されました。珍しくもない、平凡なうさぎたちですが、彼らの暮らしぶりから何かを感じ取っていただけたら、心から嬉しく思います。

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